おひとり様は常に自分情報の更新を意識しましょう
【はじめに】
前回のコラムに続いて最近の40代の起業相談の増加について
私の思うところを紹介したいと思います。
あくまでも私の周辺というごく限られた中での感想で
これがそのまま他に当てはまるという訳ではないことを
念の為申し上げておきます。
【自分の40代を顧みて】
まずは私自身の経験からの考えですが、
30代になってささやかとはいえ役付きの身分になり、
新規配属の新人の教育係などを拝命した際には
いい格好を見せたい、頼れる先輩に観られたいという
「欲」が出ました。
同様に40代になって
一つのセクションや部門の管理責任を担うことになった時には
当然ですが個々のメンバーの指導に加えて他部門、他営業所、
との競争で負けたくない、仮に相手方のトップが同期であれば
なおさらその意識は強くなりました。
その為には、どういう働き方をしていたか?
早朝出勤からの得意先への訪問や 夜は残業が当たり前
相手方も営業ですから先方の営業時間内に訪問しても
多忙なタイミングに遭遇すれば話したいことの半分も出来ないまま
追い出されることも多々ありました。
そうなれば手は一つ、
営業前か営業後に「商談や打ち合わせ」の時間を設けれもらうのです。
朝は先方も営業のミーティングや早朝からの営業などもあるので
大半は終業後の時間帯からがこちらの商談・打合せ時間となっていきました。
さらに得意先の拠点が遠方にあれば移動時間も加味されます。
帰社が午前様、といったことが週に1度は必ずあったものですが
全く苦になりませんでしたし、その結果が成果となって実を結ぶのですから
不平不満が生じることもなかったのです。
要は与えられた目標達成のために、
自分なりの営業活動を計画し、
得意先の都合を最優先に考慮した行動で
目標以上の成果を目指す。
その為の適度な範囲での販促費の追加使用や
直行直帰、休日・深夜残業を自分の責任で
行うことで期待値を超える実績を残す。
この為に汗を流し、知恵を絞ることは
後々後輩指導のスキルとしても大きな財産となりましたし、
残業の常態化も苦にもなりませんでした。
【残業問題】
よく当時も残業に関して問題になっていたのが
部署や担当業務によって残業時間が異なることです。
例えば事務職の場合、「要領良く出来る方」は
その日の業務を定時内に終わらせて定時に退社出来ます
が、当然残業代は発生しません。
これに対し「要領の悪い方」は
同じ分量の仕事を「残業することで」こなします。
ですがその時間が残業時間とカウントされるので
前者(仕事のデキる方)より収入増になってます。
成果だけは同じになっていても
その為(会社側の経費と社員の収入)が異なるのです。
営業の場合ではさらに担当エリアによっても差が出ました。
担当エリアが拠点より遠方にあればそれだけで移動時間に差が出ますし
定時に先方との商談を終えても帰社までの移動時間の分は残業となります。
拠点近くの得意先しか担当していなければ
移動時間は少なく、同じ残業をした場合でも
残業時間の総量に大きな差が出るのは仕方ないことなのですが…
中にはあからさまに残業代稼ぎのために
ダラダラ仕事を常態化するような輩がいたり
部門長の問題になりますが、自分より先に部下の退社を認めないといった
前世紀の遺物のような問題上司による無駄無用残業の問題もありましたが、
大半は前段で述べたような処理能力の差、移動時間の残業カウントの是非
といった正解を出しにくい課題でした。
ですが、当の本人たち(少なくとも私の周辺のメンバー)は
あまりこの問題に関心がなく別の視点で事に臨んできました。
誰だって夜遅くまで仕事を続けたくはない、それは全員共通しての想いですが
「今、この仕事を完遂できるのは自分だけ」
「自分だからこの仕事を任された」
といった自惚れに近いような矜持を持っていましたし、
「日頃は聞けない得意先の重鎮の経験談が聞ける」
「昼間の訪問では絶対に口にしないような社内の問題点を口にする、
あるいは相談を持ち掛けられる」
「他社には内緒とくぎを刺しながらイベント開催の日程を漏らしてくれる、
主催メーカーとしてイベント企画を任される」など等、
残業に見合う、いやそれ以上の価値を、経験を得ることが出来るのです。
無論、時間になれば夕食を共にすることにもなりますし、
その中ではより私的な話題にも話は拡がるのでさらに距離感を縮めることになるのです。
先方から奢られることもありますし、
こちらが自腹で奢ることにも抵抗は覚えません、
やはりそれなりの成果を得ることが出来たからです。
【50代営業マンからの話】
昭和の話を長々と続けてきましたが、
最近50代の現役の営業マンとの話では
上記のような光景は「皆無」だそうです。
まずは「働き方改革」で 残業禁止や想定残業時間の厳守だそうで
特に営業関係は「営業時間外の営業」「夜からの営業」が事実上出来ないそうです。
もっと取扱高を上げられそうな感触の得意先であっても
昼間の時間内に出来る限り交際費や販促費をかけずに、
かけても想定された費用の枠内で商談し、予算分の成果があがれば
それ以上の成果の上乗せに余分な費用をかけないように
上からの厳命があるようです。
120%の実績を勝ち取るので120%の交際費を使いたい
昭和の時代はほぼ問題なくこの行動は通りましたし、
通った以上それこそ深夜残業してでも計画達成に猛進しました。
会社が自分を信用して、枠を取っ払ってくれたのですから
意気に感じないはずがありませんね。
達成に悪戦苦闘した中から
全く新しい企画が生まれたり、新しいイベント案を提案する等
結果として全社にとっても有効な結果を生じることにも繋がりました。
その為に土日返上で売り場観察に出向いたり
場合によっては図書館に通って裏付けをとることも
自分の意思で行っていました。
(無論、休日出勤なんで申請はしません、会社の指示ではないからです)
どうも今は、100%の販促費の中で予算100%こなせばそれで充分
というのが出来る営業と目されるようです。
【40代の目指すものは?】
自分としては残業してでもやり遂げたい仕事であっても
会社自体が残業禁止や自粛という一括りの制度でしか対応してくれなければ?
果たして脂の乗り切った、やる気もスキルのある40代が
今のこの枠の中で定められたやり方を強いられる仕事の進め方に
どれだけ熱心に向き合えるでしょう?
確かに、
「上の指示通りやって結果が出ないのは自分のせいではない」
「言われたとおりにやっていれば毎月の給料は確保出来る」
「余分な意見を言ってその結果無駄な仕事を増やしたくない」
こういうスタンスに何の問題意識を持たない方には
今の仕事のスタイルが似合っているでしょう。
ですがそこには自己のスキルアップや研鑽の機会はありません。
無論会社側にも言い分があるのは承知しています。
ですが現状打開の一つの選択肢が新入社員への厚遇だけであるならば、
現役戦力の中核である40代50代は納得はしないのではないでしょうか?
50代後半からの役職定年制や早期退職勧奨、再雇用によって年下の上司に仕える
元の先輩の姿を明日の自分と考えるのは当然でしょうし、だからこそ今の自分に
自負があり、自分の居場所を変えることに躊躇しないような想いを持つ40代が
第二の宮仕えと同じくらいに第二の仕事に起業・独立を目指すのも自然の成り行きと
私には思えてなりません。
別の40代半ばの方からの話ですが、
ここにきて会社の方針に変化が生じてきて「若い者の意見をどんどん取り入れて
枠にとらわれない働きのサポートをして欲しい。」という通達が出たそうです。
ですが、肝心の自分たちの代の頃にはそんな仕事の進め方は即決で否定され、
若手から具体的な相談を受けてもアドバイス出来るような経験値もないと嘆息してました。
その結果、今の会社では自分のスキルを発揮出来る機会は今後も減少し、
上層部と若手の板挟みで過ごす生活に見切りをつけて起業・独立志望に
舵を切ったとのことでした。
【終わりに】
起業・独立の相談を生業とする私からすれば
やる気のある若い世代(40代)の行動は大いに結構なことではありますが、
元サラリーマンとしては会社の将来、特に直近の5年10年後に
会社幹部として残っているのはどういったタイプの方になっているかが
どうにも気になって仕方ありません。
現在40代の会社員の方は
これからの10年20年後の自分の姿をどう思い描いているでしょう?