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損保会社での苦情対応経験をもとに、カスハラから社員を守る体制づくりをサポート

カスハラ対策と交通事故対応に強い社会保険労務士・行政書士

井上久

井上久 いのうえひさし
井上久 いのうえひさし

#chapter1

「お客さま相談室」で蓄積したノウハウをもとに、社員を守るクレーム対策を伝授

 顧客からの悪質なクレームや不当な要求への対処に悩む経営者は少なくありません。杉並区にある「井上久社会保険労務士・行政書士事務所」の〝イノキュウ〟こと、代表の井上久さんは、クレーマー・ヘビークレーマー対応と交通事故相談を得意とします。

 「介護施設や病院で、患者や家族からの暴言などで、職員が疲弊して辞めてしまうなど、いわゆる〝カスハラ〟対策は重要な経営課題です。クレーマーから社員を守る体制づくりをサポートします」と井上さん。

 中小企業向けに、「クレーマー・ヘビークレーマー対応」をテーマにした無料セミナーを開催。〝1人ではなく必ず3人で対応〟〝言われっぱなしではなく主張すべきところは言う〟〝最寄りの警察とパイプをつくる〟など、具体策をアドバイスします。

 もともと大手損害保険会社に40年以上勤めていた井上さん。「本社お客さま相談室」の統括主任として、4年間で3144件のクレーム対応にあたりました。
 「相手が声を荒げたときの効果的な応対など、実践から得たノウハウがあります。何の予備知識もなく、立ち向かえる人はいません。特に経営者には、悪意を持ったクレームは必ずしも〝円満解決しようとしない〟と意識してほしいですね。『早く何とかしろ』では、従業員がますます追い込まれます」

 また、退職した元社員による未払い残業代やパワハラを理由にしたクレームにも対応実績があります。対応を誤ると、真面目に働いている現役社員からの信頼を失うリスクにつながると指摘します。
 「金銭で安易に解決せず、毅然した態度を示しましょう。直接交渉はできませんが、同席やアドバイスの形で後押しします」

#chapter2

経営の悩みから交通事故まで、身近な相談相手として伴走

 井上さんは、中小企業向けに、月額1万円の「特別顧問契約」を設けています。電話かオンラインでの経営相談や、従業員向け相談窓口を担い、書類作成や届出などの手続き支援は含みません。
 「今や、届出や申請はオンラインで完結できるものがほとんどなので、その委託費を軽減しつつ、身近な相談相手として活用ください。また、ハラスメントなどが発生した際に、社員が安心して第三者に相談できる窓口を設けることは、トラブルの早期発見や未然防止につながります」

 事業を進める中で、「どこに相談すればいいかわからない」という悩みは出てくるものです。これまで、「東京働き方改革推進支援センター」の相談員として、約2000社を訪問したほか、ポータルサイト「日本の人事部」の質問コーナーで回答者を務めるなど、幅広い悩みに対応してきました。
「経営者から多く聞かれるのは『人が採れない、すぐに辞める、育たない』といった悩みです。まずはすべて受け止め、必要に応じて専門家につなぐなど、〝道先案内人〟として、解決までの道筋を示すことができます」

 また、損保会社での経験を生かし、交通事故相談にも力を入れています。ケガを負った被害者の相談業務を担当し、交通事故の賠償に関わる法律にも精通しています。
 「保険会社では加害者側のため、最初は〝敵〟のように見なされますが、やりとりを進める中で、ほとんどのケースで円満に示談をまとめました。不当な扱いを受け、困っている方の役に立てます」

井上久 いのうえひさし

#chapter3

保険会社での挫折から50代で独立を目指し、ダブルライセンスを取得

 井上さんは、大学卒業後、損害保険会社で40年以上勤務しました。入社から着実にキャリアを積み、部長職まで上り詰めた52歳のとき、自身の失敗から降格処分を受け、人生の岐路に立ったと言います。
 「正直なところ、それまで会社に貢献してきた自負がありましたが、身から出たサビとはいえ積み上げてきたものが一瞬で崩れ去り、愕然としました。ただ、ここで腐るわけにはいかないと、独立を目指そうと決意しました」

 働き続けながら、必死で勉強し行政書士と社会保険労務士の資格を取得。定年退職後の2021年に事務所を開業しました。目標は、「80歳現役」と決意を語ります。
 「開業当初は、孫が成人を迎えたときに、自分が稼いだお金で一緒に飲むことを目指していました。今は、6人いる孫の誰かが事務所を継いでくれたらいいなと思うようになりました。その日まで、この高井戸の地に根差し、地域の企業や個人のお力になれる事務所でありたいと考えています」

 クレーマー対応に悩んでいる経営者に向けては、次のようにメッセージを送ります。
 「経営者には、気合と気迫も必要です。最初から気持ちで負けていては、クレーマーに向かえません。特にもめごとの現場では、トップが毅然と対応する姿勢を見せることで、社員たちを守ることができます」。クレーム対応や労務管理に悩んだとき、そっと背中を押せる存在でありたいとの思いを胸に、井上さんはこれからも中小企業とともに歩み続けます。

(取材年月:2025年4月)

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井上久

カスハラ対策と交通事故対応に強い社会保険労務士・行政書士

井上久プロ

社会保険労務士・行政書士

井上久社会保険労務士・行政書士事務所

損保会社で3000件超の苦情に対応した経験から、中小企業のクレーマー・ヘビークレーマー対策をサポート。セミナーで実践に基づくノウハウを伝え、社員を守る体制づくりをアドバイス。交通事故の相談も得意です。

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