心が迷子のあなたへ:「何のため?」の問いに光を灯す思考の整理術
はじめに
あっという間に5月も後半に差し掛かり、日中の日差しに初夏を感じる季節となりましたね。皆さんの心の中は、今、どのような季節を迎えているでしょうか? 職場の同僚や友人との関係で、常に相手の顔色をうかがい、本音を言えずに疲弊して常に曇り空のような方もいらっしゃるかもしれませんね。「嫌われたくない」という思いが強すぎて、本当の自分を押し込めてしまっている…そんな日々に、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちは、誰かに嫌われることを恐れるあまり、無意識のうちに自分を偽ってしまうことがあります。相手に合わせることで波風が立たず、一時的には安心感を得られるかもしれません。しかし、その状態が続くと、やがて心は疲弊し、まるで自分ではない誰かを演じているかのような孤独感に苛まれることになります。それは、まるで色鮮やかな絵の具をたくさん持っているのに、いつも同じモノクロの絵しか描いていないような状態です。本当は様々な色で表現したいのに、それを出せない息苦しさだけが増していくでしょう。
しかし、どうか安心してください。その「嫌われたくない」という思い込みは、手放すことができます。このコラムでは、皆さんが心地よい対人関係を築き、自分らしく輝くためのヒントを、心を込めてお伝えしたいと思います。
「常に人の意見に合わせる」がもたらす「最悪のゴール」
「嫌われたくない」という思いから、常に人の意見に合わせてしまうと、一体どのような未来が待っているのでしょうか?想像してみてください。会議では、本当は違う意見を持っているのに、誰かが発言した途端、その意見に賛同してしまう。ランチの場所も、行きたいお店があるのに、皆の意見に流されてしまう。休日の予定も、本当はゆっくり過ごしたいのに、友人の誘いを断れずに無理をしてしまう。
そうして日々を過ごしていくと、やがて皆さんは「自分の意見を持たない人」として、周囲から認識されるようになるかもしれません。最初は「協調性がある」と思われても、次第に「主体性がない」「何を考えているのかわからない」という評価に変わっていく可能性もあります。そして何よりも、自分自身が「本当の私」を見失い、何が好きで、何が嫌いなのかさえ分からなくなってしまうという、最悪のゴールが待っているかもしれません。
整理整頓において、不必要なものをいつまでも持ち続けていると、本当に必要なものが見えなくなり、スペースが圧迫されてしまいます。それと同じように、皆さんの心の中に「嫌われたくない」という不必要な思い込みを抱え続けると、本当に大切な「自分の軸」が見えなくなり、心が圧迫されてしまうのです。
しかし、この「最悪のゴール」を避けるために、今から正しい「選択」を積み重ねていくことができます。要不要の判断に必要なのは勇気ではなく、「選択」なのです。
視点を変えるだけで世界は変わる:自分軸を取り戻す心の整理術
私たちは、とかく「相手を変えよう」とか「相手に好かれよう」と考えがちですが、本当にそうでしょうか?ここで皆さんに提案したいのは、視点を少し変えてみることです。それは、「相手の反応をコントロールしようとしない」という考え方です。
私たちは、相手の感情や行動を直接コントロールすることはできません。できるのは、自分自身の思考と行動を選択することだけです。例えば、「会議で自分の意見を言ったら嫌われるかもしれない」という不安がある時、その不安を「嫌われるのが嫌だから言わない」という選択肢につなげるのではなく、「もしかしたら、私の意見が役に立つかもしれない」という可能性に目を向け、「言ってみる」という選択肢を選ぶことができます。
それは、まるで散らかった部屋の中で、どこから片付けようか途方に暮れるのではなく、「まずは、この小さな引き出しの中だけを整理しよう」と、手の届く範囲から始めるようなものです。一つずつ「要る」か「要らない」かを淡々と選択していくことで、部屋が整っていくように、皆さんの心の中も少しずつ整理されていくでしょう。
たとえば、友人に誘われた週末の予定で、本当は乗り気でない時。「断ったら嫌われるかも」という思いが頭をよぎるかもしれません。しかし、そこで「嫌われたくないから行く」という選択をする代わりに、「今回は別の予定があるので、また今度誘ってね」と、正直な気持ちを伝えるという選択肢もあります。相手がどのように受け止めるかは相手次第であり、皆さんがコントロールできる範囲ではありません。しかし、自分の気持ちに正直に行動したことで、皆さんの心は確実に軽くなるはずです。
心地よい関係へ導く「二択の繰り返し」ステップ
では、具体的にどのようにして「嫌われたくない」という思い込みを手放し、心地よい対人関係を築いていくのでしょうか。ここでは、皆さんの現状から望むゴールへと繋がる、実践的なステップをいくつかご紹介します。
【問題】常に相手の顔色をうかがってしまい、本音を言えずに疲弊している
【ステップ1】漠然とした「嫌われたくない」を具体的な場面に分解する
例えば、「会議で自分の意見が言えない」と漠然と感じているのであれば、「Aさんの前では意見が言えない」「Bさんの質問には答えにくい」といった、具体的な人物や状況に落とし込みます。
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【ステップ2】その場面で、今日「できそうな小さな一歩」を二つの選択肢で考える
「Aさんの前で意見を言う」のはまだハードルが高いかもしれません。そこで、「Aさんが話している時に、相槌を打ってみる」か、「会議後、Aさんに『先ほどの件、少し教えていただけますか?』と質問してみる」など、より小さな、行動しやすい二つの選択肢を考えます。
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【ステップ3】感情を挟まず、淡々とどちらか一つを選択し、実行する
選んだ行動を、結果を期待しすぎずに淡々と実行します。「ただやった」という事実を積み重ねていきます。
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【ステップ4】結果を観察し、次の選択肢を考える
小さな行動によって、何かしらの変化が起こるはずです。例えば、相槌を打ったことで、Aさんが少し微笑んでくれたかもしれません。その結果を踏まえ、次に「もう少しだけ」できそうな二つの選択肢を考えます。
【ゴール】心地よい対人関係を築き、自分らしい人生を手に入れる
この繰り返しが、皆さんの「嫌われたくない」という思い込みを、具体的な行動レベルの「選択肢」に分解し、その中から「今日できそうなこと」を一つ選び、実行してみるというプロセスです。そして、この小さな「選択」の繰り返しこそが、皆さんが心地よい対人関係を築き、自分らしい人生を手に入れることへと繋がっていくのです。
たとえば、職場のデスク周りが散らかっていると感じるなら、まずは引き出しの一つから始めてみましょう。「要る」か「要らない」か。この二択を淡々と繰り返すことで、心の中もクリアになっていきます。それは、まさに皆さんの心の状態とリンクしているのです。身の回りの物を整理することは、頭の中を整理し、ひいては心の整理にも繋がっていくのです。
おわりに
「人に嫌われたくない」という思い込みは、皆さんの心を縛り付ける鎖のようなものです。しかし、その鎖を断ち切るために必要なのは、特別な勇気ではありません。目の前にある二つの選択肢のうち、どちらか一つを選び、淡々と実行していくという、小さな「選択」の繰り返しです。
北海道は今最も新緑が美しい季節です。新しい葉が力強く芽吹き、伸びていくように、皆さんも自分らしい心地よい関係性を育んでいけるはずです。無理に背伸びをする必要はありません。できることをできる範囲で、今日から一つずつ始めてみてください。その積み重ねが、やがて大きな自信となり、皆さんの毎日を、より豊かなものへと変えてくれるはずです。
このコラムで触れた「二択の繰り返しで人生を軽やかにする」という考え方について、さらに深く知りたい方は、長谷川絵里子の著作「0%勇気の決断力-二択の繰り返しで驚くほど人生が軽くなる方をAmazon Kindleにてぜひ手に取ってみてください。きっと、皆さんの心に新たな気づきが生まれるはずですよ。