現実的なIT、デジタル化戦略で製造業の人手不足と、生産性向上の課題を段階的に克服する

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

日本の製造業が直面している人手不足と、多品種少量生産における生産性向上という
課題は非常に深刻ですね。

特に中小企業においては、ITやデジタル化の必要性は理解していても、人材や資金の
制約からなかなか進められないという状況はよく耳にします。しかし、そのような
状況下でも、独自の工夫で成功を収めている企業は確かに存在します。

これらの企業に共通する成功の秘訣は、自社の課題に合わせた現実的なIT、デジタル化
戦略と、それを支える人材育成と外部リソースの活用にあると言えるでしょう。そして
資金面についても、段階的な投資や補助金・助成金の活用によって乗り越えているケー
スが多いです。

以下に、具体的な事例を交えながら、中小製造業が人手不足と資金不足を克服し、生産
性向上を実現するための解決策を詳しく解説していきます。

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   (人手不足解消と生産性向上の秘策は?)

1. 現状の課題の整理と認識
まず、改めて中小製造業が抱える課題を確認しましょう。
深刻な人手不足
若年層の減少や製造業離れにより、熟練技能者だけでなく、現場作業員やIT人材の確保
も困難になっています。

多品種少量生産
顧客ニーズの多様化に応えるため、多品種少量生産が主流となる中で、品種切り替えの
頻度が増加し、段取り替え作業や在庫管理が複雑化しています。これが生産性向上の
大きな阻害要因となっています。

IT・デジタル化の遅れ
大企業に比べて、中小企業ではIT投資やデジタル化が遅れています。特に、現場でIT
を活用できる人材が不足しており、何から始めれば良いか分からないという声も多く
聞かれます。

資金不足
IT投資には一定の資金が必要となりますが、中小企業では潤沢な資金を確保すること
が難しい場合があります。

2. 成功企業の秘訣:課題解決に向けた具体的なアプローチ
これらの課題を克服し、生産性向上に成功している企業は、以下のようなアプローチ
を取っています。

2.1. 課題の明確化と優先順位付け
まず、自社の生産現場における具体的な課題を明確にすることから始めています。

現場の見える化
生産ラインの状況、作業時間、不良発生状況などをデータで把握し、ボトルネックと
なっている工程や改善すべき点を特定します。

課題の優先順位付け
洗い出した課題の中から、改善効果が高く、取り組みやすいものから優先順位をつけ
ていきます。例えば、「まずは簡単な作業の自動化から始める」「特定の工程の不良
率を下げる」など、具体的な目標を設定します。

2.2. 現実的なIT・デジタル化戦略
大企業のような大規模なシステム導入ではなく、中小企業の実情に合わせたスモール
スタートでのIT・デジタル化を進めています。

ローコスト・ローリスクなツール
高価な専用システムではなく、クラウドサービスやタブレット端末、スマートフォン
アプリなど、比較的安価で導入しやすいツールを積極的に活用します。

段階的な導入
最初から全ての工程をデジタル化するのではなく、特定の工程や業務に絞って導入し
効果を見ながら徐々に範囲を拡大していきます。

現場主導の改善
IT部門だけでなく、現場の意見を積極的に取り入れ、現場で使いやすいシステムや
ツールを選定・導入します。現場が主体的に運用に関わることで、定着率も高まり
ます。

2.3. 人材不足の克服:外部リソースの活用と人材育成
IT人材の確保が難しい状況下で、外部リソースを賢く活用し、既存の人材を育成する
ことで対応しています。

外部専門家との連携
ITベンダー、システムインテグレーター、コンサルタントなど、外部の専門家と連携
し、IT戦略の策定、システム導入、運用支援などを依頼します。補助金や助成金を
活用することで、費用負担を軽減することも可能です。

既存社員のITスキル向上
外部研修、オンライン学習、OJTなどを通じて、既存社員のITスキルを底上げします。
特に、現場リーダーや中堅社員を対象に、ITリテラシー研修やデータ分析研修などを
実施する企業が増えています。

ITに強い人材の育成
情報系の学部を卒業した新卒者や、ITスキルを持つ中途採用者を積極的に採用し、
社内でIT人材を育成します。

2.4. 資金調達:補助金・助成金の活用と段階的投資
IT投資に必要な資金は、補助金・助成金を積極的に活用することで、負担を軽減でき
ます。また、段階的な投資によって、初期費用を抑えつつ、効果を見ながら投資を
進めることが可能です。

IT導入補助金、ものづくり補助金などの活用
国や地方自治体が提供する補助金・助成金を活用し、ITツール導入費用やシステム
開発費用の一部を補助してもらいます。

リース契約、レンタルサービスの活用
高価な設備やシステムは、リース契約やレンタルサービスを利用することで、初期
投資を抑えることができます。

クラウドサービスの活用
クラウドサービスは、初期費用を抑えられ、月額利用料で済むため、中小企業に
とって導入しやすい選択肢です。

投資対効果の重視
IT投資を行う際には、費用対効果を十分に検討し、投資回収期間やROI (投資利益率)
を明確にすることで、経営層の理解と協力を得やすくなります。

3. 成功事例:中小製造業における具体的な解決策
具体的な成功事例を通して、上記の解決策がどのように実践されているかを見ていき
ましょう。

事例1: A社(金属加工業・従業員50名) - タブレット活用による工程管理の効率化

課題
多品種少量生産のため、工程管理が煩雑で、作業指示や進捗状況の把握に時間がかか
っていた。紙ベースでの管理のため、情報共有の遅れやミスも多かった。

解決策
タブレット端末を導入し、工程管理システムを構築。作業者はタブレットで作業指示
を確認し、作業実績を入力。進捗状況はリアルタイムで管理者が把握できるように
なった。

効果
作業時間の短縮、情報共有の迅速化、ミスの削減。残業時間の削減にもつながり、
従業員の負担軽減にも貢献。

事例2: B社(機械部品製造業・従業員30名) - AI外観検査システムの導入による品質向上

課題
人手不足のため、外観検査の人員を確保するのが難しく、検査品質のばらつきも課題だった。

解決策
AI外観検査システムを導入。カメラで撮影した製品画像をAIが自動で解析し、不良品を検出。

効果
検査時間の短縮、検査精度の向上、人件費の削減。品質向上とコスト削減を両立。

事例3: C社(食品製造業・従業員20名) - RPA導入による事務作業の自動化

課題
事務部門の人手不足が深刻で、受注処理、請求書発行、データ入力などの事務作業に
多くの時間がかかっていた。

解決策
RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) を導入し、定型的な事務作業を自動化。

効果
事務作業時間の大幅な短縮、人的ミスの削減、事務部門の残業時間削減。コア業務への
集中が可能になり、生産性向上に貢献。

4. まとめ:中小製造業が目指すべき方向性
中小製造業が人手不足と資金不足を克服し、生産性向上を実現するためには、以下の
点が重要となります。

 自社の課題を明確化し、優先順位をつける
 現実的なIT・デジタル化戦略を策定し、段階的に実行する
 外部リソースを積極的に活用し、既存社員のITスキルを向上させる
 補助金・助成金を活用し、段階的な投資で資金問題を克服する
 成功事例を参考に、自社に合った解決策を見つける
 IT・デジタル化は、あくまで手段であり、目的は生産性向上や経営改善です。焦らず、
 自社のペースで、着実にIT・デジタル化を進めていくことが重要です。

今回の情報が、貴社の人手不足解消と生産性向上の一助となれば幸いです。もし、さらに
具体的なご相談やご不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください。

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濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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